ビートルズ・ブートレッグ55年目の真実

Review 18            「From Us To You, A Parlophone Rehearsal Session」と

                                                                          「A Guitar's All Right John But You'll Never Earn Your Living By It.」

 1977年から1978年にかけて、珍しい10インチのカラー盤でプレスされた2枚のブートレッグが製作された、それは瞬く間に、ブートレッグファンから支持を得、人気の高いタイトルとなった。

 ひとつはビートルズの「From Us To You, A Parlophone Rehearsal Session」、もう一つはジョン・レノンの「A Guitar's All Right John But You'll Never Earn Your Living By It.」というソロ・ブートレッグだった。

 収録された貴重な音源もさることながら、10インチでカラー盤という珍しさは、ファンにとって記憶に残るにふさわしい条件を兼ね備えていた。

 実は、アナログ・ブートレッグ最盛期の70年代においても、10インチでプレスされたブートレッグは数種類しかなく、それらはほとんどWizardoグループによって製作されたものであったのである。

 ブートレッグに価値を付け加える方法はさまざまである。最初にカラー盤でプレスしたのはTMOQだった。Wizardoはいわゆる"コレクターズ・アイテム"という視点があったように思える。最初に彼が制作したブートレッグもオリジナルのインサートが挿入されていた、あるいはまた、インサートを折り返し、それを破らなければレコードを取り出せないといった具合に、彼には音源としてのレコードという発想以外に、何か他とは差別化を図るアイデアがあったように思える。

  Wizardoグループによって最初に制作された10インチブートは1976年の「Blue Öyster Cult / In My Mouth Or On The Ground」(IMP-1106)であった。この4曲入りブートはそもそもColumbiaがプロモーション用に制作した非売品の「Bootleg-EP」とタイトルされた12インチのレコードがソースであり、そこからパイレートされたわけだが、そのままLPサイズではなく10インチのカラー盤にしたことや独創的なカバー・アートは注目に値した。


← 写真

「Blue Öyster Cult / In My Mouth Or On The Ground」(IMP-1106, 1976年)

Columbiaがプロモーション用に制作した非売品の「Bootleg-EP」とタイトルされた12インチ・レコードからのパイレート。

 さらに1977年には「Nanker Phelge(Rolling stones)/ Schoolboy Blues b/w Andrew's Blues」を制作された。これも通常の2曲収録のシングル盤を避け、あえて10インチでプレスしている。このブートレッグに直接携わった人物は'Art'Gnuvo とDeekというTAKRLのブートレッグに多く関与してきた2人だが、Ruthless Rhymesレーベルも発見されており、プレスに関してはWizardoグループの誰かが深く関与したと推測される。

                    ↑     写真「Nanker Phelge(Rolling stones)/ Schoolboy Blues b/w Andrew's Blues」

上段:オリジナル盤は「IMP 1126」がスラッチド・アウトされマークが刻印されている。ちなみにマトリックス「IMP 1126」はLP盤「 Andrew's Blues」(Dragonefly)にも使用されたナンバー。        下段:ブラウン・マーブル・カラーでプレスされたリイシュー・プレスはオリジナルからディスク・コピーされており、マトリックスの筆跡は異なっている。  

 ↑ 写真 「John Lennon / A Guitar's All Right John But You'll Never Earn Your Living By It.」GA01)    1977年末に発売、オリジナル・インナー・スリーブ、インサートがついた、ディスク・レーベルはカスタム・レーベルで、そこには「An Audifön records 」と印刷されている。

 こういった流れの中で1977年末には「John Lennon / A Guitar's All Right John But You'll Never Earn Your Living By It.」がリリースされた。こちらもカラー・レコードでプレスされたが、特に奇抜な色のマルチ・カラーレコードや、多数にわたるカラー盤でプレスされ、初版にはオリジナル・インサートが挿入されるなどコレクターズ・アイテムとしての価値を持ち合わせており、「From Us To You, A Parlophone Rehearsal Session」の高セールスへとつながる布石となった。

↑ 写真 上段:最初のプレスにおけるカバー写真では、オリジナルの写真通りジョンが右側の正しい位置にプリントされている。ブルー、レッド(GA02/03)などのカラー盤でもプレスされた。上段右はオリジナル・インナースリーブ。         下段:左は1977年末の音楽専科掲載広告とその拡大写真、カバー写真のジョンの位置は右。右の写真は1978年3月の広告、ジョンの位置は左に位置するカバー写真に代わっている。

 「John Lennon / A Guitar's All Right John But You'll Never Earn Your Living By It.」におけるコレクターズ・アイテム」としての付加価値をつける意図が見て取れるのは、凝ったデザインのカスタム・レーベルと手書き風の曲目が書かれたインサートがそうだが、使用されたインナー・スリーブも同様である。おそらくは手の込んだ作業だったに違いない。これはST Regisというアメリカ大手の製紙会社による既製品の紙袋である。しかし、プリントされているように10×13インチの大きさではない。自分たちで大きさを少し手を加え変えたのである。ちょうどよいインナー・スリーブが無いため結果的に行ったことなのかもしれないが、既製品を購入して、ブートレッガーが自分たちで10インチの大きさのレコードを入れるのにちょうどよい大きさにしてある。

← 写真 

「John Lennon / A Guitar's All Right John But You'll Never Earn Your Living By It.」の(GA01)などに使用されたインナー・スリーブ、大手の製紙会社による既製品の紙袋であることがわかる。

↑ 写真 ジョンが左のリイシュー・プレスではマルチ・カラーでもプレスされた(GA04/05)、その他、単色カラーやレッド地のレーベルも使用された(GA06/07

↓ 写真 上段:シルバー地のレーベルでは、Watching Rainbows (WR3)で使用されたカバーが再利用されたり、ブラック盤でもプレスされた(GA08/09)  下段:「From Us To You, A Parlophone Rehearsal Session」がプレスされた同時期に、同じようにRuthless Rhymes, Ltdレーベルが使用され各種カラー盤のプレスがなされた(GA10/11/12

 1978年に入り5月頃、「John Lennon / A Guitar's All Right John But You'll Never Earn Your Living By It. Ruthless Rhymes, Ltdレーベルによるリイシュー・プレスとほぼ同時に、「From Us To You, A Parlophone Rehearsal Session」はプレスされた。

↑ 写真 「From Us To You, A Parlophone Rehearsal Session」は1978年5月に発売された。1stプレスからディスク・レーベルにはRuthless Rhymes, Ltdが使用された。マルチ・カラーでのプレスはホワイト地の(FU13)と、イエロー地の(FU01)で確認されている。

↓ 写真 単色カラーでのプレスは各種、相当数確認されている。ホワイト地Ruthless Rhymes, Ltd レーベル使用のものはFU03/04/05/06/07)、イエロー地レーベルのグリーン・カラーは(FU02)。

 「From Us To You, A Parlophone Rehearsal Session」では、カスタム・レーベルやインサートなどの付属は無かった。(おそらくA Guitar's All Right John But You'll Never Earn Your Living By It. 」ではコストがかかってしまったからであろう)

 しかし、ファンの支持を得るには十分の内容がそこにはあった。というのも「From Us To You, A Parlophone Rehearsal Session」のソースとなったものは、1964年7月17日にロンドンのBBC Paris studioで録音されたものであるが、同年8月3日にBBCよりオン・エアされる番組「From Us To You(4回目)」のためのものである。このブートレッグにはオン・エアされなかった音源や、リハーサルの音源が含まれていた。音質は悪いものの貴重な録音が含まれている。8月3日のオン・エアに関しては「The Beatles At The Beeb Vol.11」などに収録され、その後も様々なブートレッグに高音質で収録されているものの、放送に使われなかったリハーサル・セッション部分は今もってこのソースを上回るマスターによるブートレッグは出ていない。

↑ 写真 上段のレーベルが貼られていないプレス Green/Blue(FU08/09)、Yellow(FU14)や 下段のホワイト・レーベルによるプレス(FU15)など、リイシュー・プレスではコストのかからない方法を選んでおり、「A Guitar's All Right John ~」とは差を感じてしまう。

 その後、両タイトル共に、Fakeコピー盤が出回った。オリジナルより複写されているため、カバー写真の印刷は悪く、音質も劣っている。主にカラー盤でプレスされたものの、ブラック盤でもプレスされた。

 このFakeコピー盤では社名こそ無いものの、ホワイト・レーベルにスタンプされたタイトルや、ディスク・レーベルの形状からすると、後にVerzylと名乗るブートレッガーである可能性が高い。

← 写真

「From Us To You~」のFake コピー盤(FU10/11/12

上段右の写真、上がオリジナル・カバーの印刷、下がFake コピー盤の印刷

下段:ブラック盤のほか、カラー盤でもプレスされた。

Matrix:UTU 10A/B

← 写真

「From Us To You~」同様に「A Guitar's All Right John~」のFake コピー盤も作られた(GA13/14


Matrix:GAR 10A/B

 1986年に製作された「From The Vault」という8枚組BOXセットには、リプロダクションされたカバーで、「From Us To You, A Parlophone Rehearsal Session」はセットの中に収められた。発売より実に8年を経て、オリジナル・スタンパーで再プレスされた。(FU16/17)

← 写真「From The Vault」BOX

← 写真

「From The Vault 」のセットに収められた時の仕様は、以前のものと多少異なっていた。(FU16

ジャケットは厚手、左側より取り出すようになっている。ディスク・レーベルはシルバー地のTMOQレーベル。

少数、BOXセット以外で単体でも出回った。(FU17

ディスク・カラーはBox Topのカラー・ディスク同様、透明系(Clear Vinyl)で色のついたタイプ。

「From The Vault」に入ったということは、根強い人気があったことが一つの要因と考えられるが、別の理由として考えられることは、このブートレッガーにとって重要な一枚であったからではなかろうか?

 「TMOQ Collection」そして「From The Vault」は誰によるものだろうか?選別されたタイトルのラインナップから考えると、明らかに「Mr. Audifon」ことP氏によるものである。(参照→「Mr. Audifönと呼ばれた男 」)「Audifon」という社名が使用されたブートレッグ・タイトルのリリース時期を思い起こしてみよう。1977年末のGA01)のカスタム・レーベルに「An Audifön records 」と印刷されたのが「Audifon」と標榜した最初であった可能性が高い。つまりこの両タイトルは、P氏にとって最初の成功作だったのではないか。

 そして、P氏によるブートレッグ・リリースの後には必ずと言っていいほど、Verzylによるコピー盤が制作された。1980年以降では同一スタンパーが使用されることもあった。この不思議な関係性もすでにこの時から成り立っていたのだろう。

   当サイトに掲載されているコンテンツ(写真、文章など)を無断で使用、複製等することを禁止させていただきます。

   ( No Unauthorized Reproduction of this content.

Powered by Webnode Cookie
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう